アニメ『ユーリ!!! on ICE』雑感

評判を聞いて遅れて見始めたらほんと面白かった…!

今期は『ハイキュー!!』と『ユーリ!!! on ICE』の放送を楽しみに毎週過ごしてる。

『ユーリ!!! on ICE』、たぶん第3滑走と第4滑走はそれぞれ6~7回は見た気がする。キャラクターだと私はヴィクトルが一番好きだなあ。第3滑走の「カツ丼大好きだよ」のヴィクトルの声、ほんとに優しくて愛情深くてすごく好きだ。

第3滑走、ユリオとのショートプログラム対決にあたって、曲とテーマのイメージについて悩む勇利。「これじゃヴィクトルを超えられない」と言う勇利に幼馴染の西郡が「マジでヴィクトルを超えられると思ってんの」と返す、というやりとりがあったんだけど、その部分に前に読んだ米原さんと糸井重里の対談を思い出していた。

 

糸井 以前に、スポーツ系の方とお会いして聞いたのですが、「とっても才能のある選手は金メダルを取れない」んですって……。

米原 あ、そうだろうね。

糸井 その人を追い抜こうと思っていた、「ちょっとマシな人ぐらいの人」が、自分より先を走っている天才を見定めて努力していくと、金メダルなんですって。金メダルの選手って基本的には、本当に才能のあるやつが先にこぼれてくれて、その結果、あそこの位置にいるそうで、その話には、リアリティーありますよね。(米原万里『言葉を育てる 米原万里対談集』筑摩書房、2008年、pp.294-295)

 

もちろん勇利もすごく才能のある選手だし、ヴィクトルというとんでもない才能の選手はきっと実際には何度も金メダルを取っているんだろうとは思う。でも、「自分より先を走っている天才を見定めて努力していくと、金メダル」という部分にはどこかヴィクトルを追う勇利を思わされてしまった。あとたぶん米原さんがロシア語の同時通訳者だった、ってところから連想された部分もあったのかも。ヴィクトルはロシアの選手という設定だし。

『ユーリ!!! on ICE』、主に勇利とヴィクトルの二人についてだけど、どうもお茶の間で見るにはソワソワしてしまう場面もあって、そのあたりについては性的な読み換えの余地やCPのほのめかしをあえて前面に持ってくることで却ってフラットな関係を描こうとしてるんだろうか…とか考えていた。目に見えるものを変換したい欲を先に満たすことで、それをフラットなものとして読み換えさせんと欲す的な…。

そしてそのあたりのことをうまく言い表せなくてモヤモヤとしていたところに流れてきたのが一連のツイートだった。

 

 

 

 

 

自分のモヤモヤを言い当ててくれるような、しかし同時に自分が考えもしなかったことをこうも提示してくれる内容でほんと面白くてめちゃくちゃ興奮した…。

そして偶然ではあるけど、勝手に連想してた米原さんと糸井重里の金メダルの話ともどこか繋がる部分もありつつでそれもまた面白かった。

 

そして続く第4滑走。この回は、限りある時間とそのなかでもがくこと、がテーマであるようにも感じていた。

フィギュアスケートという競技に出合って、才能を発揮することになって、そのなかで残された時間と自分の身体的な限界と向き合っていくということ。勇利は選手としての、ユリオは少年としての見た目でいられる時間を意識しながらフィギュアスケートという競技に向き合っている。その上で今の自分を更新しようともがく姿が描かれていたのが第4滑走だった。

 

 

 

勇利をコーチすることになったヴィクトルもまた、例外なく限りある時間のなかで生きている。引用したつぶやきにもある通り、限りある時間を持つ人間としてのヴィクトルを強く感じさせてきたのが第4滑走でもあった。

 

 

人間離れしたひとつの象徴としてのヴィクトル像*1が提示された後、限りある生を持つあくまで人間としてのヴィクトル像が打ち出されてきたのが第4滑走。

一度提示したものを崩して先に進む、というのが第3滑走からの第4滑走だと思うと制作サイドの方々の匠の仕事ぶりをまざまざと感じさせられる…(そもそも第4滑走自体で提示されていたのも現状を突き崩して進む、そうして進化する、というストーリー展開でもあったし)。

 

とにかく『ユーリ!!! on ICE』ほんとに面白い。来週の放送回も楽しみだ~

 

 

言葉を育てる―米原万里対談集 (ちくま文庫)

言葉を育てる―米原万里対談集 (ちくま文庫)

 

 

*1:「リビング・レジェンド(生きる伝説)」との呼び名を持つ圧倒的な才能の持ち主のヴィクトルだったり、これはあくまでひとつの解釈ではあるけど引用したつぶやきの中で指摘されていた金メダルの擬人化としてのヴィクトルだったり、がそれにあたると思う。