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『ハイキュー!!』 第207話~第217話

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先日遊びに行った神津島にて。
めちゃくちゃ海がきれいで、本当にすごく楽しかった…!
伊豆諸島また行きたいなあ。


4月に書いていた天童くんについての覚書が思いもかけずいろいろな方に読んでいただくことになって、有り難い気持ちでいっぱいでした。
Twitter効果ほんとすごい…。
以下ここ最近の本誌の感想です。



※コミックス未収録分のネタバレを含みます。



今本誌では強化合宿編の真っ最中で、全日本ユース強化合宿に参加する影山、白鳥沢学園高校での「疑似ユース合宿」に参加する日向と月島、個人練習に励む烏野高校の面々の模様が並行して描かれている。
この強化合宿編のコンセプトは、「『個』を鍛える」ことなんだろうと思う。
春高に向け、烏野のひとりひとりがいかに力を強化するか。日向も影山も自分のプレースタイルを進化させていくだろう展開が示唆されているし、それは烏野の他のキャラクターにとっても同じことだ。*1
個人的な切り取り方だと、日向と影山がお互いのいない状況下でいかに個としての自分の力を強化するか、というのがこの強化合宿編の一番の見どころのような気がしている。そしてこの展開は、コミックス13巻の第111話で提起されていた影山のセットアップが無い中で日向をコートに入れておく絶対的な理由のなさ、という問題を踏まえてのものであるようにも見える。
その問題提起は、条善寺高校との試合中、影山とともに日向が下げられる描写の中で行われている。サーブやブロックなどの他の基礎プレーは日向よりも他のメンバーの方が優れており、日向の速攻は影山のトスありきの攻撃だ。それゆえに、影山のセットアップなしに日向をコートに入れておく絶対的な理由は特に無い。観戦する伊達工業高校の二口はそう指摘し、それを聞いた同校の青根は「今はまだそうかもしれない」と言った後、それは日向もまたわかっている、と続ける。
強化合宿編、日向の参加する「疑似ユース合宿」は、条善寺高校と白鳥沢学園高校の二校の監督のもと行われている。*2
そして、第111話においては条善寺との試合の中で提示された問題が、第207話で鷲匠監督から直接日向へ突きつけられる。影山というセッターの居ないお前に俺は価値を感じない、という鷲匠監督の言葉は、第111話で提起されていた問題そのものだ。
「疑似ユース合宿」、日向は選抜メンバーではない。烏野高校の中で招集がかかったのは本来月島だけだった。影山というセッターの居ない、個人としての日向は選ばれなかった。「疑似ユース合宿」に乗り込んだ日向は、「ボール拾い」として合宿に参加することになる。
「疑似ユース合宿」における練習相手として再登場した若利くんは第213話で言う。「選ばれない」という事が日向の現状であり、それは今後もあり得る事だ、と。
日向がこの先選ばれていくためには、彼個人としての力を伸ばしていく必要がある。そしてその舞台となる「疑似ユース合宿」を主催しているのは、白鳥沢学園と条善寺という二校だ。白鳥沢学園は「個々の強い力の足し算」(コミックス18巻第150話)たる存在として君臨してきた実績があるし、条善寺も2対2の試合を練習に多く取り入れることで選手たちの個としての力を伸ばしていることが第110話で描かれている。*3日向の個人としての力を強化していく展開にとって、「疑似ユース合宿」はこれ以上ないくらいの最適な舞台だろう。
この展開の中で、日向が獲得するものとして具体的に示されているのは「思考」という能力だ。第211話、「ボール拾い」として合宿に参加する日向は焦燥感の中で思考する。「探せ 探せ 考えろ いつもと同じ目線じゃ駄目だ いつもと同じ考え方じゃ駄目だ」。続く第212話、日向は「ボール拾い」として外側からコート上を見つめ、分析し、ボールを追うだけではわからなかった「情報」の存在に気づく。第213話の試行錯誤を経た第214話、ボールを拾う日向の動きに穴原監督は目を止める。そして「日向の本能任せに近かった動きには今確かに“思考”が伴って」おり、今はまだぎこちない思考も積み重ね経験を伴ううちに「本能とは似て異なる“直感”というカタチに化ける」ことを予感する。
そしてそんな日向に目を止めるのは穴原監督だけではない。白鳥沢学園の若利くんもまたその一人だ。第214話、体育館から出たところから練習の模様を見つめる若利くんに、同じ白鳥沢学園の山形くんと共にやってきた天童くんは「どうだい 妖怪の子どもはがんばってるかい」という言葉を投げかける。
ここでの一連のやり取りの中で、天童くんは烏野の10番(日向)と9番(影山)が「妖怪ぽい」ことを指摘している。そしてこれは直接口にこそしないが、若利くんについてもまた天童くんは「妖怪ぽい」と捉えている。
コミックス20巻の第178話で描かれている通り、かつて「妖怪ぽい」との評価を受けていた天童くんと、そんな天童くんから「妖怪ぽい」との評価を受ける日向、影山、若利くんの構図が描きこまれているのがこの場面だ。ここでのやり取りの中で、天童くんは自身が「妖怪ぽい」と見ている三人と自分は別枠のように捉えているようにも見えるが*4、「妖怪」枠=天童くん・若利くん、「妖怪の子ども」枠=日向・影山として考えると、今後の展開の中で天童くんと若利くんの二人から日向に何かしらを引き継ぐ流れがあるのではないか、とも思ってしまう。
白鳥沢学園が「個々の強い力の足し算」たる存在だとすれば、その中で個としての力を発揮する双璧として描かれていたのが若利くんと天童くんでもあったように思える。そういう意味でも、この強化合宿編で特に若利くんと天童くんが個として成長を遂げていこうとする日向に関心を向けている描写が積み重ねられているのは順当とも言える。
さらに言えば、第214話で提示された日向の「本能任せに近かった動き」に「“思考”が伴」うことで「本能とは似て異なる“直感”というカタチに化ける」、という成長の方向性は、どこか天童くんの得意とするゲス・ブロックについての説明を想起させるところがある。
コミックス18巻の第156話、天童くんのブロックの特徴について烏養先生は解説している。天童くんが得意とするのは、「トスが上がる前に攻撃を読み」、「ほぼ直感で跳ぶ」というゲス・ブロックだ。これはあくまで個人技頼みのプレースタイルであり、リード・ブロック(トスがどこに上がるかを見てから跳ぶブロック)やコミット・ブロック(特定のアタッカーをマークする者を作るブロック)とは種類を異にしている。
第217話、穴原監督は「常に“次”を考えながらやる事」を2対2の練習の注意点として口にする。2対2の練習において、2人しか居ない中で精度の高い攻撃はなかなかできない。だからこそ、相手をよく見て考え、その上で隙をつくということが大切になる。そしてそれは、実際の試合においても同じことだ。不確定なことが起こり、それにその都度対処していくという難しさ。いつでも準備が整っているというわけではなく、咄嗟の判断で動かなければならない場面も必ずあるだろう。咄嗟の行動には一瞬の判断能力と個人の身体能力が出る。そういう意味でも、天童くん的な読みと直感に裏打ちされた動きが、何らかのかたちで日向へと継承されるような展開もありうるのではないか、とも思う。

そしてまた、春高へ向け烏野が力をつけていくためのもう一つの鍵となるだろうキャラクターがいる。
それは、影山が参加する全日本ユース強化合宿に参加する星海光来くんという新しいキャラクターだ。
星海くんは身長169cmという小柄さながら、並外れた身体能力とセンスを持つ確かな実力者として描かれている。
ハイキュー!!』に登場するキャラクターの一部が「光」と「影」に関係する名前を背負っており、そうした対比がストーリー展開に絡むということはこれまでも繰り返し描かれている通りだ。日向がその名前に背負う「太陽」もまた恒星であり、そんな日向の目指すところの「小さな巨人」のひとつのモデルとして描かれている星海くんは他でもない「星」の名前を背負っている。第215話、星海くんを前に「ビビってます けど参考になります」と影山が口にする通り、彼の存在が烏野の戦い方を進化させるための一つの鍵となってくるのかもしれない。


強化合宿編を読んで考えたことをまとめながら改めて思ったのは、古舘先生の展開の作り込み方って、コンセプトが先にあってそのための最適なキャラクターなり場所なりを用意していく印象があるなあ、ということだった。
あと伏線と言うには全然弱いのだけど、条善寺戦の第109話と白鳥沢戦の第161話の両方にネット際に落ちたボールを咄嗟に足で上げる描写があることに気づいて(第161話は天童くん)なんだかちょっと嬉しくなった。
個人的には第216話を読んだ段階で(1)穴原監督と斉藤コーチが生牡蠣が原因で体調不良になる→(2)「疑似ユース合宿」が1日自主練になる→(3)天童くんと若利くんが練習に入って日向に引き継ぐ、みたいな展開を期待混じりに予想してしまっていたんだけど、第217話を読む限り体調不良の気配が無いからその線は薄そうだ…。
とにかくハイキュー!!ほんとうにおもしろいし天童くんの再登場嬉しすぎた…明日はジャンプがないけど、19日のニコ生で何かしら10月のアニメ3期について情報が来たらよいなあ。

*1:第214話(山口、田中)、第216話(木下)をはじめとして、全日本ユース強化合宿と「疑似ユース合宿」に参加していない烏野のメンバーについては「唯一究極の個人技」たるサーブを強化する描写が多く描きこまれている。

*2:舞台は白鳥沢学園であり責任者は鷲匠監督であるが(第209話)、指導については条善寺の穴原監督がメインであると説明されている(第216話)。

*3:コートの上に常に2人しかいない状況に慣れることで、“誰かがやってくれる”という感覚が薄くなり常に全員が攻撃を仕掛けるという意識が生まれる、そしてそれゆえに各自が臨機応変な対応をすることが可能になる、ということが第110話では提示されている。

*4:バレーへの執着や貪欲さこそが天童くんにとっての指標なのかもしれないと個人的には思う。